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第147回 イギリス野の花ガイド

「イギリスの野の花えほん」 あすなろ書房 2010年1月発行 63ページ
シャーロット・ヴォーク/絵 ケイト・ペティ/文 福本友美子/訳
原著「A CHILD’S GIUDE TO WILD FLOWERS」  Charlotte Voake & Kate Petty 2004年

イギリスの野の花ガイドです。花の名前を、英語でかいてあるのはイギリスのよび名、カタカナでかいてあるのは日本でのよび名。ついで、草たけ/どんなところに生えるのか/花の咲く時期/学名(アルファベットで)を記載。野原、森、土手、道ばた、空き地、岩や壁のすきま・・といった自然の中で咲いている花々が多く収録されているようです。本を開いて右のページ角には、花の色がつけられていて、実際に植物を目の前にした時に探しやすいようになっています。
日本に住むわたしたちには、なじみのないお花もありますので、楽しいですね。あの児童書にのってた植物だ!という発見がありますよ。ハリエニシダ、セイヨウイラクサ、プリムローズってこういう花なんだと初めて知りました。イギリスが舞台の児童書のおともにたいへんいいんじゃないかとおもいました。
挿絵がかわいいです。ちょうちょやてんとう虫など、小さな虫たちも一緒に描きこまれてとてもかわいらしい。一言コメントも楽しいです。
ぼーっと静かに眺めて楽しい絵本です。ガーデニングがご趣味のかたにもどうぞ。

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第115回 楽しいおさんぽ

メアリー・チャルマーズさんの絵本を2点ご紹介いたします。
モノクロのさしえでお花やおうちなど一部に淡い色がつけられていて優しい感じです。二足歩行のねこやいぬたちがかわいくてファンタジック。時々、猫らしい犬らしいしぐさのさしえも面白い。友達との楽しい時間が描かれていて幸せな気持ちになります。

「いっしょにおつかい」 岩波書店 2019年5月発行 54ページ
メアリー・チャルマーズ/作 福本友美子/訳
原著「COME FOR A WALK WITH ME」 Mary Chalmers 1955年

白い家にかあさんと住んでいるスーザンという女の子のおはなしです。
かあさんにお隣のホーシーフェザーおばさんへおつかいをたのまれ(はちみつ1カップ)、友達と散歩して、遊んで、おうちへ帰るというとてもシンプルな筋立てなんですが、すごく楽しい。お話の途中にのっている地図を見ると、すごく遠回りしてます。かあさんはまだかなまだかな~と待ってるかもしれないんですが、いいんです。待っててもらいましょう。
ホーシーフェザーおばさんのために、ともだちのうさぎのウィルと花束をつんで、ねこのトミー、きつねさん、ねずみさん、たぬきさん、くまさん(?)など森の動物たちと遊びます。野原や涼しい池、うすぐらい森に咲くお花をたくさんたくさんつみます。道っぱたで好きなだけお花をつめるってすごく贅沢ですよね。そしてもちろん、おやつがでてきます。ブルーベリーパイをいただきました。ああ~おいしそう、いいなあ。
散歩のついでにおつかいしたというごくささやかなことなのですが、楽しいことてんこもりの素晴らしい時間をすごしました。

「こねこのハリー」 福音館書店 2012年10月発行 32ページ
メアリー・チャルマーズ/作 おびかゆうこ(小比賀優子)/訳
原著「THROW A KISS, HARRY」 Mary Chalmers 1958年

ちょっとした危機はありますが、このおはなしもシンプルなストーリーです。こねこのハリーはかあさんとさんぽにでかけます。とっぱちに出会ったカメさんにいきなりちょっかいかけるのが楽しい。ひとりでうろちょろしたり屋根の上に登っておりられなくなったりとやんちゃなこねこらしい行動がかわいいんです。ちょっと危ないですけれどね。屋根からおろしてくれた消防士さんへお礼に投げキスしなさい、とかあさんに言われてもしないハリーああしなさいこうしなさい、と言われ続けてちょっと意固地になってるハリーにふふっと笑ってしまいます。かあさんのこと大好きなんだけど、時にはそんな気持ちになること、わかるわかる。にんまりしているハリーの表情にもご注目ください。たまらないです。
しかしながら、投げキスってちいさな男の子が大人へしてもいいものなんですね。艶やかな女性が男性にするものとおもっていました。
こねこのハリーのシリーズは他にも3作ございます。「ハリーのクリスマス」「まっててねハリー」「ハリーびょういんへいく」



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第79回 それぞれの道を歩む父と娘のおはなし

挿し絵がとてもきれいなバーバラ・マクリントックをご紹介したいとおもいます。
舞台は19世紀頃の町並みとクラシックな装いです。女性は羽根を飾った帽子と長いドレス、男性は山高帽。車道には、馬車が走っています。
経済的に豊かではありませんが、仲良く暮らす芸術家の父と娘の物語です。

「ダニエルのふしぎな絵」 ほるぷ出版 2005年9月発行 32ページ
バーバラ・マクリントック/作 福本友美子/訳

 ダニエルは絵を描くのが大好きな女の子。
シルクハットをかぶった鳥、翼のはえたカエルなどおしゃれな服を着た動物たち、といった想像力の豊かな絵をかきます。そしてお父さんは、写真家。ダニエルのファンタジックな絵を見ると「目に見えるとおりに描けないなら写真にしたほうがいい。」見たままの世界に付け加えるものはない、とおもっているんですね。だからお父さんは、ダニエルの描く絵が理解できないのでした。感性の違いであって、どちらが良い・悪いということはないはずです。写真のように見えるままに描けないダニエルは、大好きなお父さんをがっかりさせるのがとても苦しい。苦しいけれどどうしても写真のように描けず想像力を付け足してしまいます。木の葉の落ちた寒々しい木々は大きなバラが咲き誇った姿に。 羽根飾りのついた帽子のレディは、カラスのレディに。帽子にはリボンや帽子をつけた小さな鳥(カラスのひな?)がたくさんおすまししています。すごく重そうですがだいじょうぶ? レディのつれた子犬は金色の四足歩行の魚になっています(これはちょっと不気味なのです)。 馬の石像は、羽根のある馬・ペガサスに。 紳士は、立派なしっぽの狐。 キリンの女性の帽子にはパイナップルや人参とセロリらしきものが飾られています!
ほんとに、豊かな想像力が素敵。見る人を楽しませる挿し絵とおもいます。写真を否定する気はないのですけれど、気持ちがあたたたかになる挿し絵のほうが、わたいは好きだなあ。
そんな時、お父さんが病で寝込んだりとトラブル発生。お父さんを助けたいとダニエルは売るための写真を撮りに、お父さんのカメラを持ってでかけます。この健気な頑張りに胸うたれます。そして幸運にであうことができたのでした。
最後に父は、ダニエルの表現したいことを理解してくれます。「この子はこの子で、自分の道をみつけたんだな」
理解を示すダニエルのお父さんに胸がぐっときてしまいました。ダニエルはすばらしい才能を心置きなく伸ばしていけるでしょう。



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第65回 ちっちゃなゾウとちっちゃなネズミがおおきなまちで

「ちいさなエリオット おおきなまちで」 マイクロマガジン社 2018年7月発行 32ページ
マイク・クラトウ/作 福本友美子/訳

エリオットは、ちいさなぞうです。
象といえば大きいもの、というイメージですが、こんなことばで始まると引きつけられます。
白地にうっすらピンクとブルーの水玉のあるゾウ、エリオットがとにかくキュート。人の腰くらいの身長なのでその対比から身長50cmくらい。
全体的に落ち着いた色調でシックなイラストです。町を歩く人々のファッションから推測しますと、1930〜40年代頃でしょうか。描き込まれた小物類・・車、消火栓、おうちの内装(古いタイプの冷蔵庫、ラジオ、洗面台の蛇口の取っ手やテーブル)などが、クラシックでとてもかわいい。レンガ造りの町並みはニューヨークの風景だそうで、とても美しいですよ。絵を眺めるだけでも楽しいです。

ぞうのエリオットは大きな街に住んでいました。なかなか良い街なのですが、エリオットは小さいので、道や駅で人に踏み潰されないように気をつけねばなりません。ドアの扉、洗面台、台所の蛇口も高い場所にあるのでとっても大変です。 私も小柄な方なので、わかるわかる〜。洗濯ものを物干し竿にかける時に手が届きづらいのでわざわざ踏み台をもっていかなくちゃいけません。身長がプラス2・3cm高ければ・・と感じることしきり。たいへん共感します。

大好物のカップケーキを買いに街へでたのだけれど、店員さんがエリオットに気づいてくれません・・・。肩を落としてとぼとぼ帰るシーンはさびしくなります。
帰り道、エリオットよりもっともっと小さな生き物、ねずみに出会います。ねずみくんも体が小さくて困っています。ぼくも小さいけれど、もっと小さいねずみの助けになれると、エリオットは気が付きます。
二人で協力しあい、カップケーキをゲット。

小さいもの同士が協力して苦手を克服していく楽しさ・喜びが伝わってきます。エリオットが一生懸命のばした鼻の先で、さらに体を伸ばしてふんばるねずみがとても愛らしい。
そしてもうひとつ、カップケーキがおいしそうでたまりません。クリームやチェリーで飾られとてもきれいで、食べるのがもったいないほどの可愛らしさ。

2019年11月時点で「ちいさなエリオット ひとりじゃないよ」「ちいさなエリオット あそびにいこう」「ちいさなエリオット たまにはとおくへ」と全部で4作、刊行されています。



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第17回 図書館にライオン。走ってはいけません!

今回は、マナーについて考えてみよう、の本です。

「としょかんライオン」  41ページ 岩崎書店 2007年4月発行
ミシェル・ヌードセン/作 ケビン・ホークス/絵 福本友美子/訳

私はネコ科の生き物が好きなので、ライオンと女の子が一緒に絵本を読んでいる表紙イラストに、すでにノックアウトです。いい表紙ですね~。

なぜかライオンが図書館にあらわれます。肉食獣たるライオンが捕食活動を行わないことに、読んでいて面食らいます。そもそもライオンが町中にいることに違和感がありますが、まあ読み続けてみましょう。
どうも、このライオン、絵本を読んでもらいたい様子。もっと読んで!と大声でうなってアピール。司書のマクビーさんは、追っ払おうとしますが、メリウェザー館長は、図書館のきまり 1.大声をだしてはいけません 2.走ってはいけません  このルールをまもるなら、別にいてもいんじゃない?と寛容な態度。次の日も早くからやってきて、ライオンは館長の仕事を手伝います。しっぽではたき掛けしたり、高いところにある本を取るための台になったり、読書中の子どもたちのソファになったり(私もそこにまざりたい・・)、本を運んだり、館長さんの封筒貼りをお手伝いしたり。絵本が大好きなライオンの献身的な様子に、もう可愛くてたまらなくなってきます。ネコ科のいきもの、バンザイ!
そして事件が起こり、ライオンくんは図書館に出入り禁止になってしまうのですが、閉館した図書館の前で雨にぬれ、悲しそうに佇むライオンが切なくて可愛くて、もうたまりません。うちに来いや!ってタテガミを引っ張りたくなります。
さあ、ライオンくんはどうなるんでしょうか、どうするんでしょうか。続きは、絵本をごらんください・・・・・
ライオンとメリウェザー館長さんの心の通じ合いに、何度読んでも目がうるんでしまう絵本です。