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第38回 ちょっと変わったウエズレーの夏休みの過ごし方

「ウエズレーの国」 あすなろ書房 1999年6月発行 33ページ
ポール・フライシュマン/作 ケビン・ホークス/絵 千葉茂樹/訳

夏休みの時期にぴったりな一冊、いかがでしょうか。(夏休みじゃなくても面白い絵本とおもいますよ。)
ピザやコーラは大嫌い。町で流行りの髪型(両サイド剃り上げ、いわゆるモヒカンというすごいスタイル)なんてしない、ちょっと変わったウエズリー。友達はいない。学校帰りにちょっかいをかけにくる子ならいますが、逃げるのは得意。「ウチの子はまわりからちょっと浮いてるね」と両親が話しているのをこっそり聞いて、その通りかもしれないなと自分で納得しています。そんな男の子の庭に、図鑑にものっていない不思議な植物がやってきます。楽しい楽しい夏休みが始まります!

この植物、実は絞ってジュースに、根っこはゆでても・焼いても・フライにしてもいける。(おいしそうでたまりません!)皮・茎・葉っぱを使ってコップ・フォーク・カゴなどの道具や機械を作ります。なんと機織り機を作って、軽くて涼しい服まで!他にもいろいろたくさん。ウエズレーは、この庭をウエズランディア(ウエズレーの国)とよんでいます。興味を持った子供たちには、虫除けクリームを作る作業をしてもらったり(虫除けを売るのがなかなか賢い)、ウエズランディアのゲーム(ラクロスのスティックの進化版みたいなのを使ってます)で一緒に遊びます。両親ものちに招待します。

すごいのは、これから。ウエズレーは、文字を作り、モノのひとつひとつにウェズランディア語で名前をつけ、新しい言語をつくりあげます。もともと、発明は好きなようで本をたくさん読んでいる。自らの知識をもとに、おいしくて加工自在な作物で新しい文化を作り上げるという発想・豊かな想像力が面白いですね。植物の利用方法を読むとほんとわくわくします。ほんとにこの植物があったらいいなとおもいます。そして、新しい学期が始まったら、ウエズレーは一人じゃなかった。

異端な自分を認識しつつも好きなことに邁進するウエズレーがいいですね。息子に無関心・無理解な両親の会話の冒頭にすこし悲しくなるのですが、友達ができ両親が歩み寄ってくれるという流れに、ほっとします。すごく楽しい夏休みを過ごせているのがうらやましい。特に、高いところにツリーハウスを作って、星空のもと暑い夜を涼しく過ごす・・・というくだりに、ため息がでます。今年の夏は、ウエズランディアに(涼みに)行きたいなあ。



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第17回 図書館にライオン。走ってはいけません!

今回は、マナーについて考えてみよう、の本です。

「としょかんライオン」  41ページ 岩崎書店 2007年4月発行
ミシェル・ヌードセン/作 ケビン・ホークス/絵 福本友美子/訳

私はネコ科の生き物が好きなので、ライオンと女の子が一緒に絵本を読んでいる表紙イラストに、すでにノックアウトです。いい表紙ですね~。

なぜかライオンが図書館にあらわれます。肉食獣たるライオンが捕食活動を行わないことに、読んでいて面食らいます。そもそもライオンが町中にいることに違和感がありますが、まあ読み続けてみましょう。
どうも、このライオン、絵本を読んでもらいたい様子。もっと読んで!と大声でうなってアピール。司書のマクビーさんは、追っ払おうとしますが、メリウェザー館長は、図書館のきまり 1.大声をだしてはいけません 2.走ってはいけません  このルールをまもるなら、別にいてもいんじゃない?と寛容な態度。次の日も早くからやってきて、ライオンは館長の仕事を手伝います。しっぽではたき掛けしたり、高いところにある本を取るための台になったり、読書中の子どもたちのソファになったり(私もそこにまざりたい・・)、本を運んだり、館長さんの封筒貼りをお手伝いしたり。絵本が大好きなライオンの献身的な様子に、もう可愛くてたまらなくなってきます。ネコ科のいきもの、バンザイ!
そして事件が起こり、ライオンくんは図書館に出入り禁止になってしまうのですが、閉館した図書館の前で雨にぬれ、悲しそうに佇むライオンが切なくて可愛くて、もうたまりません。うちに来いや!ってタテガミを引っ張りたくなります。
さあ、ライオンくんはどうなるんでしょうか、どうするんでしょうか。続きは、絵本をごらんください・・・・・
ライオンとメリウェザー館長さんの心の通じ合いに、何度読んでも目がうるんでしまう絵本です。