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第153回 いきもの好きさんにいかが

スティーブ・ジェンキンズさんのかがく絵本を3冊ご紹介いたします。
生き物のからだ、行動、習性など違いがよくわかる絵本です。
ジェンキンズ氏は絵ではなく、紙を切って貼って表現しているのが特徴です。紙の毛羽・繊維・しわ・色のグラデーションなどを利用して生き物たちを迫力満点に表現しています。

「これがほんとの大きさ!(児童図書館・絵本の部屋)」 評論社 2008年3月発行 30×25cm 32ページ
スティーブ・ジェンキンズ/作 佐藤見果夢/訳
原著「ACTUAL SIZE」 Steve Jenkins 2004年

ゴリラのオスは立ち上がると180cm、体重200kg。数字だといまいちピン とこないかもしれませんが、ゴリラの実際の手のひらの図がどーーん!(表紙の絵) なんと大きい。ニンゲンオスの手の1.5倍はありそうです。力強さが伝わってきます。
他にも、アラスカヒグマの頭部(横からの図)、ダチョウの頭と首(意外と大きいんだねぇ)、オオアリクイ(舌が60cm、わたしなら長すぎて持て余しそうです)、イリエワニ(体長7m!ページ3枚で表現、でも大きすぎておさまってない!)、ゴライアスガエル(体重3kgもあるんですって!うわぁ~)、ジャイアント・ジップスランド・ミミズ(90cm以上あるそうです。土の中を這い進む音が聞こえるという・・・)、など。
ぎょえーとおもったのは、ダイオウイカの目玉はバスケットボールくらい!!大きすぎてぎろぎろ見られているように感じてかなり気味が悪いです。
さらに極めつけ、タランチュラ(裏表紙)!!!こんな大きなクモに出会ったらいったいどうすりゃいいんだ!?
登場したいきものの解説が最後にまとまってます。こちらもなるほどなるほど、と楽しい。
「これがほんとの大きさ!続」もあります。こちらは古代生物を取り上げています。

「ホネホネ絵本」 あすなろ書房 2010年9月発行 28.4×23.4cm 44ページ
スティーブ・ジェンキンズ/ 千葉茂樹/訳
原著「BONES」 Steve Jenkins 2010年

こちらの本では、生き物の内側に焦点を当てました。
骨です。いろんな動物のホネをながめていきましょう。
まずは、腕、脚、ズガイコツ、首・・生き物によって、大きさ・形は様々だけど、作りは基本的に同じ。
胴体の肋骨だけは、ちょっと違って、肋骨がたくさんあります。
2mのニシキヘビのホネの絵で4ページ使ってます。圧巻。これでも小型なほうの蛇だそうです。亀の甲羅は、肋骨なんですね。
それから関節。骨と骨がであうところ。関節があるから、なめらかにまわしたりひねったり、とんだりはねたり、複雑な動きができるんです。
頁の下側に、実際よりどれだけ縮尺しているかの表示もあります。だれでも一つは持ってるヒトの頭蓋骨は実際の大きさで掲載!
漢字が多めでちょっと難しい言葉もあるので小学高学年くらいの子たちならしっかり読めそう。知識満載の絵本です。

「生きもの ビックリ 食事の じかん」 評論社 2015年12月発行 25.4×25.4cm 32ページ
スティーブ・ジェンキンズ & ロビン・ペイジ/作 佐藤見果夢/訳
原著「HOW MANY WAYS CAN YOU CATCH A FLY?」 Steve Jenkins & Robin Page 2010年

こちらは、奥様のロビン・ペイジさんも参加の絵本。
今度は、生物の行動について。
・どうやって魚をつかまえる?
生き物は、生きているからには何か食べなくてはいけません。地球には、たくさんの姿の生き物たち(動物、魚、鳥、虫などなど)がいて、それぞれの姿にあった得意な方法で、食べ物を探し捕まえます。
イルカのあわあわ、ヒグマの待ち伏せ、デンキウナギのビリビリ ・・など
・どうやってたまごをまもる?
卵を生んだらざっくり放りっぱなしなシロアジサシ、ハサミムシのまめさ、ヒメバチは幼虫に卵を・・うわぁ・・ など
・どうやって葉っぱをつかう?
葉っぱの除虫成分を体にぬるオマキザル、オランウータンの傘、サイホウチョウはほんとに裁縫するんです! など

ほかにもこんなテーマがあります。
・どうやってハエを、つかまえる? ・どうやってあなをほる? ・どうやって貝を食べる?

たくさん生き物を知ることもできます。シロヘラコウモリ、って初めて知りましたが、白い毛糸玉みたいなかわいいやつです。
生き物が、それぞれ工夫をこらす行動がなんとも面白いです。生き物好きなひとたちはよろしければお手にとってみてくださいませ。
スティーブ・ジェンキンズさん、ロビン・ペイジさんの他の著作
「どうぶつ、いちばんは だあれ?」「どうぶつのことば -ケロケロ バシャバシャ ブルンブルン」「進化のはなし」「こんなしっぽでなにするの?」など

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第152回 悲しみを乗り越える

「ナイナイとしあわせの庭」 徳間書店 2002年4月発行 48ページ
キティ・クローザー/作・絵 平岡敦/訳
原著「MOI ET RIEN」 Kitty Crowther 2000年

ママが亡くなって寂しい女の子リラのお話です。
ここにいるけどいない、リラだけしか見えない友だち「ナイナイ」がいます。イマジナリーフレンドといわれる存在です。寂しい気持ちを抱えていたり、愛する家族を突然なくした子どもたちが、悲しみのあまり想像により作り出すことがあるのだそうです。実際にいるようにお話したり遊んだりすることができます。大人になるにつれ消えてしまうようです。
リラのお父さんも奥さんをなくした悲しみから立ち直れずふさぎ込んでいて、リラのことを思いやる心の余裕がありません。おばがいて心配してくれていますが、ナイナイのことを認めてくれていません。他の子どもたちに変わってる、と言われています。相談できる人が誰もいないのです。
なんとも胸の痛む状況に気分が少し暗くなるのですが、ナイナイと二人でおしゃべりしあうのは楽しそうなのですよね。決して悪い存在ではなく、悲しみから自分を支えてくれるともだちなのです。
おうちの庭にはかつてたくさんのお花が咲いていました。お母さんが美しい花を咲かせたお庭だったのでしょう。お母さんが亡くなってから誰にも顧みられず荒れ果てています。リラやお父さんの心と同じように。

お母さんが大好きだったヒマラヤブルーポピーというお花を咲かせよう、と励ますナイナイにいらいらしてあっちへ行って!と言ってしまいました。するとナイナイが消えてしまいます。悲しみの殻から抜け出せないリラの心をとかすのは、やはりお母さんが教えてくれた渡り鳥オガワコマドリが庭にきたことでした。

お母さんとの思い出の花、ブルーポピーは育てるにはとても手のかかる花だそうですが、リラはこの庭で育てることにしました。お母さんが教えてくれたように、花を大事に育てます。
悲しみを乗り越えるには、時間が必要です。時間や手間をかけ花を育てることで心を癒やされるというのはわかるような気がします。リラはナイナイは本当はいないことは承知なのでしょう。壊れそうな心を保つにはナイナイがいないといけなかったのです。
花を通して悲しみに閉じこもった心から開放されたリラとお父さんが庭で笑顔で向き合うシーンにほっとします。
ラストには、ちょっと不思議なプレゼント・・

キティ・クローザーさんは喪失からの再生、不思議な存在、死、恐怖のことなどやや重めのテーマを題材に書く作者さんです。
他の作品に
「こわがりのかえるぼうや」怖がりなカエルの子とパパの物語。「にわにいるのは、だあれ?:パパとミーヌ」未読「ちいさな死神くん」死が近い人を迎えに行く死神くんはいつも怖がられるのですが、エルスウィーズは違いました。「あるひぼくはかみさまと」森を散策中のテオは神様と出会いました。不思議な味わいがあります。「みまわりこびと」農場をひそかに守る誰にも見えない不思議なこびとのお話。「おじいちゃんとの最後の旅」ウルフ・スタルク著。住んでいたお家に一度帰りたいという入院中のおじいちゃんの願いを叶えるため計画をたてるぼく。

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第151回 旅する犬エルネスト

「エルネスト  たびする いぬの ものがたり」 フレーベル館 2009年8月発行 24ページ
ヨッヘン・シュトゥーアマン/作、文 関口裕昭/訳
原著「Ernesto -Eine lange Reise auf kurzen Beinen-」 Jochen Stuhrmann 2006年

表紙の3つも浮き輪をつけた犬、エルネストが主人公です。旅する犬の物語です。
生まれ育った自分の街が大好きな犬のエルネスト。月曜から日曜日まで、毎日毎日、同じリズムで決まった通りに生活してきました。決まった毎日を繰り返す満たされている毎日。
ある日、絵葉書がおうちに届いたのです。外国から、しかも見たこともない文字でかかれた絵葉書。写真の島の景色もまったく見知らぬ場所。彼に葉書を送ってくれそうなひとに心当たりはありません。いったい誰が送ってきたのだろう。好奇心が彼を突き動かします。
どこから来たものなのか、あちらこちらといろんな動物にたずねて歩き、なんと外国へ出発。彼の行動力にはおそれいります。
結局、絵葉書は間違って届けられたものと判明。本来受け取るべきひとへと手渡すことができ、ほっとしたエルネストですが・・・。初めて受け取った絵葉書が、自分宛ではなかったことが悲しくなってしまったのです。やや無表情にかかれたエルネストですが目を伏せた悲しげな表情が胸を刺します。(抱きしめてやりたい。)
長い旅から戻り、自分の家の前にあるものを見たときのエルネストの顔が楽しいです。
いつもと同じ生活に満足していたつもりですが、思い切って住み慣れた街を飛び出し冒険してみたら、たくさんの出会いがありました。ちょっと勇気がいりますが一歩踏み出してみると新しい楽しみを見つけることができたのです。

作者のヨッヘン・シュトゥーアマンの挿絵は、なんだか不思議な味わいがあります。油絵のように色を重ねて塗っています。木彫りのようにやや角張っているなかにも曲線が組み合わさって、なんともかわいい造形です。
エルネスト以外にも、ネズミ・カンガルー・ゴリラ・モグラ・アナグマ・ペンギン・イグアナ・・などなど動物たちがたくさん登場しますがたいてい二足歩行で服も着ています。ただエルネストだけは犬らしく4本足で駆け回っているんですよね。なんででしょうね?扉絵の長い耳をだらりと伸ばして伏せたエルネストはこれほんとかわいいですね。
動物たちはみな個性的で、街や部屋の中の椅子やポスターなどの小道具なども描きこまれていてながめていると楽しいです。わたしは特に刺青のたくさん入った関西弁の口下手なセイウチが好みでした。
あとひとつ不明なのは、エルネストのお隣さん(全体が緑色でまゆげ太く目が大きい)は、なんの生き物なのかしら。

シュトゥーアマンさんの他の邦訳された書籍は
「ニコとねずみのすてきなせかい」「せかいいっしゅうビッグラリー」「はだかのサイ」

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第150回 たくさんわらってあそぶいちにち

「森のおひめさま」 平凡社 2003年2月発行 22ページ
ジビュレ・フォン・オルファース(ジビレ・フォン・オルファースとも)/作 秦理絵子/訳
原著「Prinzesschen im Walde」 Sibyle von Olfers 1909年

森に住む小さなお姫さまのいちにちです。
風、朝露、苔、きのこ、星が擬人化され、子供の姿で描かれています。彼らがお姫さまのお世話をします。つゆのこたちが、髪をとかし着替えをし朝のみじたくをお手伝い。それがすんだらおいしい朝ごはんですよ。こけのぼうやたちがお茶やはちみつを用意。まんなかの子がお皿にのせているパンのようなデザートのような茶色ものはなんでしょう?パンを失敬しようとするリスを指差すこけの子どもが面白い。
からす先生と勉強を少し。真面目そうな表情のお姫さま「はやくおわんないかなー」なんて思っていそう。かしこくりこうにならなくちゃいけませんから、少しがんばりましょう。
さあ、勉強はおしまいにして、森のはずれまでこじか、うさぎ、りすなど動物たちとおでかけする遊び時間です。きのこぼっこたちがむかしのおはなしを聞かせてくれます。まあるいフォルムの赤いカサのきのこのぼうやたちのかわいいこと。
闇がせまりお家へ帰ります。星のこどもたちが星明かりをかかげ、お城へ向けて行進です。
「きょうも たくさん わらって あそんだ」そんな楽しい一日を終えて眠りにつきます。
夜には星のこどもがひとり見張りにたってくれる、というのが素敵。見守ってくれている安心感で気持ちが安らぎます。素敵な終わり方ですねえ。
挿絵のまわりを植物が縁どるように描きこまれていてとても美しいです。実や花がついた木々がなんともきれい。作者のオルファースさんが自然を観察し愛したのがよくわかります。子どもたちの絵も繊細で表情がかわいい。

作者のジビュレ・フォン・オルファースは、1881年プロイセン王国(昔のドイツ)で生まれました。子供の頃はおてんばだったのだそうです。草花、虫、星や風など自然を登場人物にするほどですから、外で元気に遊んだ子どもだったのでしょう。自然を愛する気持ちが伝わってきます。擬人化された自然のものたちの愛らしさにぜひ触れてみてください。
他の作品に、
「風さん」「ねっこぼっこ」「ちょうちょのくに」「ゆきのおしろへ」「うさぎのくにへ」が邦訳されています。

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第149回 素敵な船とおじいちゃん

「おじいちゃんのふね」 ブロンズ新社 2011年7月発行 32ページ
ひがしちから/作

孫とおじいちゃんの絵本です。
かんたくんのおじいちゃんが大事に大事にしている船「だいすけごう」。
船大工さんが、一本の大きな木から作ってくれたという、素敵な船なのです。
かんたくんは、お休みの日には、早起きをしておじいちゃんの船に乗せてもらいに出掛けます。魚釣りをしたり、船の上でゆらゆらと昼寝をしたり、湖を風をきって走り回ったり。かんたくんがおじいちゃんと楽しい体験をたくさんしてきました。かんたくんがおじいちゃんが大好きななんですね。
ところがある日、大きな台風がやってきて、強い風と波で湖が激しく荒れて船が壊れ、おじいちゃんも怪我をしてしまいました。
おじいちゃんは大事な船が壊れ元気がなくなってしまいました。ぼくが船を直すんだ!
ここが面白いとおもうのですが、船をなおしてくれそうなところを、かんたくんは考えながらさがしていくのです。じてんしゃは自転車屋さんで直してもらいましたが、船はだめそう。病院はひとの怪我を治すところだし・・。車の修理工場でたずねてみました。船のあるところへ行ってごらん、とおしえてもらったかんたくん。港には、船があります!
港には船を作ったり直してくれる船大工さんがいました。かっこいいひげのおじいさんです。
大好きなおじいちゃんを励ましたい。その気持ちがぴしぴし伝わってきて、思わずほろりとしてしまいました。
さあ、おじいちゃんの大事な船は直るでしょうか。

著者のひがしちからさんの挿絵がとてもかわいいです。絵柄がやわらかで温かに感じます。他の作品に
「えんふねにのって」園バスならぬ園船です。船に乗って幼稚園に通います。「ぼくひこうき」折り紙は苦手だけど紙ひこうきはだいすき。できたひこうき、どこまで飛んでいく?「なんにもできないおとうさん」お休みの日、父娘が公園へ遊びに行きますよ。みーちゃんにはできるけど、おとうさんにはできないことがあるんだよ。子供にできて大人にできない。かたぐるまもそうなんですね。「ひみつのばしょ」公園のしげみの中にもぐりこみます。とっても素敵な隠れ場所。想像力がふくらみます。
など。