「ライオンららら (小学館の創作童話シリーズ18)」 小学館 1975年8月発行 44ページ
立原えりか/作 やなせたかし/画
まりちゃんは、ライオンを一頭、おたんじょうびにもらいました。金色のたてがみに王様のしるしのかんむりをかぶって、きらきらひかる目をした素敵なぬいぐるみ。名前は、ららら。ポケットに入るサイズの小さなライオンです。しかもお話できます。かわいいですねえ。
らららには、秘密がありました。なろうとおもえば、ほんもののライオンになれるのです。アフリカの野原で王様としてみんなのためにはたらかなければいけませんでした。「王様なんて つまんないよ。いつもひとりぽっちで、えらそうにしていなければならない。さびしくても なくわけにいかないし、だれかをすきになることもできないんだ。だって、みんなをおなじように愛さなければならないからね。」
二人でシーソーにのって遊んだり、ポケットにいるほんのりあったかいらららをそっとなでたり、デパートのカフェで頼んだプリンにのったほしぶどうをらららにあげたり(らららはほしぶどうが大好き)。
故郷のアフリカを思い出して寂しくなったりもしますが、まりちゃんだけを大好きでいることができる幸せをかみしめています。
けれどらららは(徹底的に悪い顔した)どろぼうにぬすまれてしまうんです。おいしいお肉のかたまりをあげよう、広い野原で走らせてやろう、どろぼうは甘い言葉で仲間になるようにせまります。ちょっと迷ってしまったけれど、やはり大好きなまりちゃんのもとへと、走ります。
なくしてしまった小さなライオンは、もしやアフリカにかえってしまったのかな、と泣いているまりちゃん。街を駆け抜けて大急ぎで帰ってきたらららは、まりちゃんをそっとだきしめ涙をしっぽのふさでぬぐいます。このシーンがわたし、大好き。ライオンにだきしめられたいですねえ~、あったかでほんのり猫くさいんじゃないでしょうか(猫ってほんのり猫くさいのです)
互いをおもいあう、そんな強くて優しいぬいぐるみがわたしのそばにもいてほしかった。まりちゃんがうらやましいです。
本物のライオンになれるぬいぐるみ、ライオンなのにほしぶどうが好き、という不思議な設定が楽しい。
そして、挿絵が「アンパンマン」の原作者やなせたかし氏。やわらかい色合い、グラデーションがきれいです。