「こちらマガーク探偵団 マガーク少年探偵団シリーズ1」 あかね書房 1977年7月発行
E・W・ヒルディック/作 蕗沢忠枝/訳 山口太一/絵
イギリスの児童文学、探偵小説です。10才の子供たちが探偵団を結成。
ワガママだが独創的、元気な少年、団長のジャック・マガーク、
タイプライターが使える記録係のジョーイ・ロカウェイ、
うっかりやだが敏感な鼻の持ち主、ウイリー・サンドフスキー、
そして木登り上手の行動派おしゃまなワンダ・グリーグ。
(シリーズ進むに従い、団員が2人、増えます。
科学知識が豊富な頭脳派ブレインズ・ベリンガム、
空手をたしなむヤマトナデシコ、マリ・ヨシムラ 日本人です!)
第1巻の日本語版発行は1978年。
最初の事件は、引っ越してきたばかりのウイリーの野球のミットが消えうせた。
ミットを盗んだ犯人を見つけ出せ!
探偵団、というそれだけでわくわくして小学生の頃、夢中になって読みました。団員がそれぞれの得意を活かして謎にせまっていくのがおもしろかったです。団長マガークの家の地下室を本拠地にして(隠れ家があるってすごく楽しそう!)、尾行の訓練をしたり、探偵のしるしであるI.D.カード(身分証明書)など小物をつくったりするのも楽しい。
おのおのの団員の得意を売り込む殺し文句は何にするか、という話になりますが、ウイリーは鼻がよくって、俺は口がうまい、ジョーイは何にする?とマガークがたずねます。ジョーイは、ぼくはアタマが良いのが売りだと言いますが、『でも、ぼくは、マガークが本気になれば、とてもぼくの頭なんか、かなわないって知っていた。』と独白しています。
それから、こんなこともいっています。マガークがフルーツ入りキャンディを食べるのですが、誰にもわけてあげません。『彼は自分のキャンデーを、およそだれにもくれたことがない。でもね、欲ばりじゃないんだ。もし、誰かかが、「ぼくにも一つくれよ」と言えば、きっとくれるよ。彼はただね、立ちどまって、そういうことを考えたりしない男なのさ。』
ジョーイはお話の語り手ではありますが、わりと地味な少年です。マガークに近い立場で彼を観察し、人柄を一番よくわかっている友人でもあるんだなあと思ったものです。10才なのに随分と大人なセリフだと、とても印象に残った文章でした。そしてキャンディが滅法おいしそうなのが記憶に残っています。
調べてみますと、シリーズ24作あり、そのうち18作が邦訳されています。絶版となっていたのですが、2003年に新装版が8巻まで発行されました。9巻以降は残念なことに復刊されていません。
そして、もうひとつの魅力が、山田太一さんのイラストでした。旧版の後見返しには、団員の紹介漫画がありました。山口太一さんの挿絵がお話にあっていて、ほんとうに楽しかった。新装版にこの紹介漫画がないのは残念。
ボンボコ マガーク探偵団♪
ペンペコ 仲良し五人組♪
ブンチャチャ 難問即解決♪
鼻のウイリー
記録のジョーイ
頭脳のベリンガム
木のぼりおてんばワンダちゃん
そしてもひとりブンチャッチャ♪
その名も高きガキ大将 ジャック・マガーク ブンチャッチャ♪
ダガジグダガジグブンチャッチャ♪
(調べたところ、こんな歌詞のようです。)
イギリスの少年少女たちの活躍に胸躍ったものです。外国へのあこがれがこの本で刷り込まれました。ただ、出版年が古いためちょっと訳が古いのです。「奴さん」だとか「せんこく承知のすけ」「このダムダム弾め!」「生意気太郎!」だとか。私はこういう時代がかった文章って好きなんですが。しかしながらミステリを苦なく読めるのならば、今の子供たちも楽しく読めるとおもいます。すべての漢字にフリガナがふられています(新装版はフリガナありですが旧版は未確認です、ごめんなさい)ので、小学中学年くらいから楽しめると思います。