「ガーゴイル」が主人公です。ガーゴイルとは、『建物の屋根やひさしからつきだした、奇怪な人間や動物のかたちをした雨どい』。
昼のあいだ動けず、ずっと屋根の上でいるように作られた彼らには、いろいろ不満があるようです。
「夜がくるまでは」 ブックローン出版 1996年3月発行 32ページ
イヴ・バンティング/作 デイヴィッド・ウィーズナー/絵 江國香織/訳
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美術館や時計塔などの屋根や壁にはりついている、ガーゴイルたち。ぴくりともしないで、からっぽの目で虚空を見つめている。夜がくるまでは。
月が出ると、動き出す。美術館のガーゴイルたちは、窓から中を覗き込みます。鎧たちやエジプトの王の棺たちが眠っているのをながめます。同じような境遇の彼らは、夜がきても動かないのですね。そこがちょっとおもしろい。眺めるのに飽きると、ダベリにいきます。木の上にねそべったり、ぶらさがったり。あるいは、天使が水を吹き出す噴水で、グチを語り合う。夏の暑さや時計台の鐘の音の大きさ、鳩のふん! 水浴び・水のかけっこ、飛びこみをして、うっぷんをはらします。(噴水を彼らに占領された天使が手を振り上げて怒っているのがご愛嬌。)そして、朝が近づきます・・。定位置へ戻り、虚空を見つめます、夜がくるまでは。
白と黒のみのモノトーン絵本ですが、たいへん迫力のある美しい絵本です。小さなひとには、ちょっと怖いかもしれませんが、昼の拘束からの、夜の開放が素晴らしく楽しいです。人間が嫌いである、ということもかかれているのが興味深いです。ガーゴイルとは何かをもっと詳しく知りたくなりました。
以前にご紹介した「セクター7」の作者が挿絵をかかれています。こちらも空想の詰まったお話ですが、また違った雰囲気の絵でとても好きなお話です。