暑い夏の夜が舞台の月明かりのもとにすすむ幻想的な物語です。挿絵がとても美しいです。お花・ぼうし・楽器など小道具や鳥・虫たちがカラフルにかわいらしく描かれ、暗い背景の上に明るく浮き上がって見えます。
蒸し暑い夏の夜、ルーシーにたんじょうパーティの招待状が届きます。不思議な魔法の紙のぼうしをかぶって、出発です。月光を浴びると、体が小さく小さくなって・・。
「つきあかりのにわで サマータイムソング」 福音館書店 1998年6月発行 28ページ
アイリーン・ハース/作・絵 渡辺茂男/訳
小鳥のタクシーに乗って、素敵なぼうしをかぶったねずみのおくさんや、持ち主とはぐれてしまった東洋風のお人形と出会って、さらにすすみます。ここで悪役登場。ふくろうの晩ごはんになりかけましたが、からくも脱出。湖を渡り、会場にやっと到着です。お庭に住む動物や虫たちが集まったのでしょうか。ヘビ・カメ・トカゲ・くも・もぐら・うさぎ・ハチドリ・カラス・蛾・ちょう、かまきり、いもむし、虫たくさん。みんなカラフルで素敵なぼうしをかぶっているのがとてもかわいい。月明かりの下、おもいおもいに歌って踊って楽しそうなのが、見開き2ページに描き込まれています。
さて、たんじょうパーティの主役は、ふくろうでした。へー!わたしには意外でした。ふくろう嫌いなわけでなくむしろ好きなのですが、悪役として登場しているものですから。全員がお祝いにやってくるなんて、みんな優しいなあ。バースデーケーキでお祝いし、今夜いもむしは食べられずにすみました。
ラストにもうひとつ、幸せがやってきます。
作者のアイリーン・ハースは、東洋美術がお好きのことで、挿絵にもあらわれています。それがまた、幻想的な雰囲気をさらにたかめているようです。美しい絵本でした。いつ読んでもすてきなのですが、残暑の夜に読むのが、なおいっそうあっているように感じました。