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第29回 コーヒーが飲みたい。

「珈琲時間」 講談社 2009年12月発行
豊田徹也/著

今回は漫画をチョイスしてみました。第1作の発行は2005年。現在(2019年5月時点で)発行されているのは3冊。寡作な漫画家、豊田徹也さんです。
ご紹介は、2作目の「珈琲時間」
コーヒーを小道具に、コメディあり、シリアスあり、カプチーノなキッドあり、シュレディンガーの猫なSF風寓話あり、深夜の男女あり、冬の海にて波に乗るサーファーと探偵あり、キリンの豆知識あり、ヤクザの友情?あり、父を刺す子あり、コーヒーをたかる嘘つきな”映画監督”あり、などなど人間ドラマ全17話の短編集。書名に珈琲とつくのだけれど、コーヒーのうんちくを語ってはいないし、コーヒーが重要なカギとなるような話もない。ただ、心の内側へするりと入りこむ優しい描写がある。哀しみを笑いに前向きさに変えていく強さがある。そしてむしょうにコーヒーが飲みたくなる。
「人生に必要なものは何か? 酒か?恋愛か?金か? それらは強すぎる 私は一杯のコーヒーだとおもう さあコーヒーを飲もう、今すぐに! なぜなら人はいつ死んでしまうかわからないからだ! なぜなら人生はあっという間に過ぎ去ってしまうからだ!(p.205、206)」
第1作目の「アンダーカレント」(講談社 2005年11月発行)にも登場する、ちょっと謎めいて無精髭だけど有能そうな探偵「山崎さん」が出てくるのもうれしい。(3作目にも登場します。うれしい!)コーヒーが好きな人にはもちろん、そんなでもない人にもおすすめしたい良作マンガ。

 他の作品・・
第3作目「ゴーグル」(講談社 2012年10月発行)6話の短編集。表題の「ゴーグル」は”親子”がテーマで、痛ましいが一番好きな作品です。巻末に著者の後書きが掲載されていて、お得感がございます。
ゆっくりでいいので、ぜひ4作目(といわず5作・6作・・)と出版していただきたい漫画家さんです。 ちなみに、巻数が増えるにつれ、女子の絵がうまくなってかわいくなってきます。3作目の諏訪くんやキキちゃんがかわいい。
追記、村上春樹「一人称単数」のカバー絵をかいておられました。扉ページの猿がまたいい味してる。