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第186回 おとなのなかにはこどもがいます

「おとなのなかのこども -おとなになるってどんなことなのかを しりたいこどものみなさんへ」
化学同人 2020年9月発行 23×17cm 32ページ
ヘンリー・ブラックショー/作 井上舞/訳
原著「The Inner Child」 Henry Blackshaw 2019年

内なるこどもについての絵本をとりあげてみました。
副題は、「おとなに なるって どんなことなのかを しりたい こどもの みなさんへ」。
裏表紙には、「こどものままで いるって どんなことなのかを しりたい おとなの みなさんへ」
とも書かれております。
こどもと大人の両方に語りかけているんですね。大人とこども、両方の心に寄り添う良作とおもいます。
『子どもの心を持っているということは、「大人になりきれてない」というのと「大人の心を忘れていない」の2種類あるんだよ。』10代後半の頃、そんなふうに諭されたことがあります。
というようなことを、この絵本を読んで思いだしました。あれはズキリとしましたねえ。
だけれど、年を経ていま、大人になるってことがわかってんのか?と聞かれると、お恥ずかしながら、わたしはきちんとした大人とはいえないようにおもいます。
でも案外、おとなもこどももそう変わんないのかもしれない。なんても思ったり。

大人の中には「内なるこども」が隠れている。
挿絵では、大人になった人に重なるように、こどもだった時の姿も一緒に書き込まれています。
内なる子どもたちは、感情そのままに動きます。隠そうとしても、隠しきれない。
「大人の中のこどもたちは 遊びたくって たまらないから 時々 外にとびだしちゃうんだ!」

例えば・・・・・
『新しいおもちゃがほしいとき  おとなは おもちゃのことを『どうぐ』だって いったり ぜったいに ひつようなものなんだって いいわけしたり するんだ』
ドキリ!わかるわかる。スマートフォンやタブレットを、必要なものだ!って言って、まだ使えるにもかかわらず、買い替えてしまったり。
『いじわるなおとな なかにいるのは いじわるなこども』
これにもドキリ!そうだよねえ。怒りの感情に流されてしまうのは、’’子供っぽい’’。
『おとなが だれかの ことを すきになったら みんな あかちゃんみたいな しゃべりかたに なる(へんなの!)』
これは、なんだかくすっときますね。う~ん、ちょっとわかるような気もします。
『おとなにも こどものみんなと おんなじように こわいものがある』
子どものときには、大人に怖いものがあるなんて、そんなこと考えもしなかったけれど、身近な大人・・小学校の担任の先生、ご近所に住んでたおじさん・おばさん、母や父・・にも、きっと怖いものはあったでしょうね。大人になったいまだとわかる。

「子どもでいるってことは、本当に大事なことなんだよ。大人になっても、絶対に忘れないことをいろいろと学ぶ時間なんだ。」
「大きくなっても君の中には、まだ子どもの君がいる。だからつらい気分になることもある。」
「でも忘れないで。自分の中にいる子どもをこれからも大切にしてちゃんと話を聞いてあげてほしい。だってね、その子がいるおかげで、君はとっても楽しい大人になれるんだ!」

「内なる子ども」というと、どちらかというと、制御できない・荒ぶる感情というイメージが強いと思いますが、この絵本では肯定的でうれしい。楽しんだもんが勝ちなんだぜ!というメッセージを感じます。
そしてだからこそ、楽しい子ども時代を過ごさせてあげたいと切に願います。
大人と子どもに語りかける絵本でしたが、大人の目線で読んでいる自分がおりました。寂しいような・嬉しいような?ちょっと不思議な気持ちになりました。
子どもの頃、大人になっちゃったらどうなるんだろう?と、とても不安に思っていましたが、その頃のわたしに、読ませてあげたかった、とおもいます。

ヘンリー・ブラックショーさんは、オーストラリア・メルボルンの作家さんです。この本がはじめての著書とのこと。新しい著書がでましたらきっと読みたい。