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第185回 須弥山で運動会

今回は以前にもとりあげた、苅田澄子さんの絵本。中川学さんの挿絵です。
ご紹介する作家・挿絵画家は、なるたけ重複しないようにしているのですが、仏教を下敷きにしたこの絵本、なかなか興味深いので、チョイスいたしました。
仏教やほとけさまのことなんて全然知らないよ、と思う方が大多数と思います。だがしかし!
前見返し・後見返しに、ざっくりほとけさまの紹介がのっています。お話を読みながら、あ、このかたは、あみだにょらいさま・みろくぼさつさま・おふどうさま・せんじゅかんのんさま・・・というふうに探しながら読むのも。読み終わったのち、カバーの裏にもう少し詳しい解説・・「古代インドの宇宙観的仏さま運動場世界」「こまいぬ・おししの違い」「ほとけさまの種類」「ほとけさまのごく簡単なプロフィール」などで再確認すると楽しいでしょう。う~ん、いたれりつくせりですぞ。
*ちなみに以前ご紹介したのは、地獄のえんまさまが激辛ラーメン屋をするお話でした。『(第33回の投稿「じごくのらーめんや」)
苅田さんはちょっと変わった世界を描くかたなようですが、こんなユーモア、わたしは好きです。

「だいぶつさまのうんどうかい」 アリス館 2017年8月発行 32ページ27cm
苅田澄子/文 中川学(なかがわがく)/絵

今日は、仏様たちの世界で運動会が開催されます。その模様をレポートいたしましたのが、この絵本。
駐車場では、雲、獅子、白象に乗って到着する仏様たちでいっぱい。
全員、赤白の体操帽をかぶっているのが、まずは笑いを誘う。おのおの準備体操や設営をしています。

さてこちらでは、ジャージを着てライン引きをする「みろくぼさつさま」と「あみだにょらいさま」の立ち話。
「あみだにょらいさま ひかりかがやいてまぶしいですわ」「みろくぼさつさま いつもスマートでうらやましいこと」
仏様たちの麗しいお言葉なのですが、ちょっと立派過ぎてなぁんか空々しく感じちゃう挨拶をかわしあってる、というのが面白いです。
あちらにおわすは「だいいとくさま」顔6つ・手6本・足6本ある明王さま。すべての手・足を動かして、ランニング中。
おっ、玉入れ競技の玉を準備するのは、おそらく「かんのんさま」。いつも憤怒の表情なはずの「あいぜんみょうおうさま」も穏やかなお顔で運動会を楽しんでいる様子。
おおきなおおきな体の「だいぶつさま」もやってきてご挨拶。「はじめての参加です。よろしゅうたのみます」 えっ!初参加なの?!そんな意外な設定に、ぷふっ と笑ってしまいます。
ほとけの国の門番・ふたごの「におうさま」が、ラジオ体操の見本をみせています。おやおや、だいぶつさまは、1000年すわりっぱなしなので足がしびれてすでに苦しそう。無理するなよ、なんて仁王様に言われちゃってます。

赤・白の組にわかれて、さあ、競技はじめ~!
最初は、玉入れ。「せんじゅかんのんさま」は手が一杯あるのでたくさん玉を投げられる、というオチ、ベタでいい。
次は、まんじゅうくい競争。わんわん ぱくり!と「こまいぬ」たちが活躍。あらっかわいい!
さてさてこんどは「しちふくじん」の演奏で、ほとけダンスの時間です。「だいぶつさま」お身体が大きいので、踊ると運動場が揺れに揺れ、みんなよろよろ・すってんころりん。わわわ、須弥山の縁から落っこちてるほとけさまもいらはいますよ。

「だいぶつさま」どの競技でも失敗つづきでお疲れのご様子。「もうお寺に帰りたい・・」とぼやいています。
最後は組体操だぜ!ですがここで問題発生。しんどいので、だあれも土台になりたくなくって、ほとけさまたちがもめています。
「わたしにのりなされ」どっかり座った大仏様。
みんなで、大仏ピラミッド。マンダラの完成!このページかっこいいですよ!このポスターあったら買っちゃいます。
最後は、ごくらくぶろで、汗を流します。大仏様が湯船につかったのでお湯があふれてる~。でもみんな、大満足。楽しい運動会でした。

ジャージを着てライン引きする「みろくぼさつさま」とか、準備体操する「せんじゅかんのんさま」とか、「湯船に入るかんのんさま、前を隠しておしり丸見え」とか・・仏様たちを茶化しておりますので、見る人によっては物議を醸しそうなところ。
正直言いますと、お正月は神社に初詣・クリスマスを祝って・法事はお寺、という暮らしでさほど違和感ございませんので、私は好きですよね。ユーモアの範疇ということでいんじゃないでしょうか・どうでしょうか。楽しく仏様たちの世界を知ることができますし、子どもたちの祭典・運動会というテーマを絡めることでとっても身近に感じることが出来るじゃないかしら。
そして、この絵本の楽しい世界観によって小さい人たちが「仏教学」に興味を持ってくれるかも・・だといいですよね・・。

かなり不可思議な世界観のお話ですが、挿絵がとにかく秀逸。この不真面目な(あっ言っちゃった)雰囲気にばっちり似合ってカラフル。グラウンドの黄色の上を、濃いめの赤・青・黄緑のほとけさまたちが配置され、とってもポップ。そこへ濃い緑で縁取りされた黒い大仏様が乱入し、全体が引き締まる。そんな感じです。この色使い、とても好きですねえ、ぐっときます。
どんな方が挿絵を担当されたのかといいますと、中川学(なかがわがく)さん、浄土宗の僧侶にしてイラストレーターなのだそうです。(なるほど、そういうことなのだ。)
続編の「だいぶつさま おまつりですよ」もありますよ~。