「えほん遠野物語 全10巻」 汐文社 2016年から刊行 32ページ
柳田国男/原作 京極夏彦/文
わたしは怪談が好きなので、怪談の絵本もよく手に取ります。怪談絵本は人気がありますね。
シリーズで怪談絵本を発行している出版社に、新日本出版社の「ゾッとする怪談えほんシリーズ」、ポプラ社の「おばけ話絵本シリーズ」、汐文社の「えほん遠野物語」があります。(記載漏れシリーズありましたらごめんなさい。)
特に岩崎書店の「怪談えほん」は特に力がはいっていますねぇ。大人向けミステリ・ホラーの作家の方々がたくさんかいておられます。宮部みゆき、皆川博子、京極夏彦、恒川光太郎、加門七海、恩田陸、岩井志麻子、小野不由美、有栖川有栖、夢枕獏、あさのあつこ、佐野史郎、藤野可織、といった豪華キャストなのです。挿絵画家も吉田尚令、宇野亜喜良、町田尚子、軽部武宏、樋口佳絵、加藤休ミ・・と盛り沢山です。
今回の投稿では「えほん遠野物語」をチョイスいたしました。遠野物語です。
岩手県の遠野地方で語りつがれる不思議なお話、妖怪のこと、家で祀られる神様のこと、変わった風習のこと等を民俗学者・柳田国男があつめまとめた「遠野物語」。この有名なこの奇譚集を、小説家で妖怪研究家の京極夏彦が絵本に仕立て上げました。
収録怪異は、こちら。
「かっぱ」「まよいが」「やまびと」「ざしきわらし」「おいぬさま」「おしらさま」「ごんげさま」「でんでらの」「おまく」「きつね」「しびと」「ばけもの」
遠野物語、読んだことがありますが、遠野の人たちから聞いた怪異を記録したものなので、とてもとてもシンプル。
それはそうですよね、学問としたら話を足したり引いたりしてはいけませんもの、当然です。ですが、失礼な言い方ですけど、なんというか・・さばさばしてるというか・・情景が浮かばないというか・・盛り上がりにかけるというか・・。わたしゃ怪談が聞きたいの!という方にはオリジナルのほうはちょっと向かないみたい?(※個人的な感想です)
もし、おじいちゃんやおばあちゃんが怪談を語ってくれるとしたらば、口調や声音を変化させてお話を盛り上げてくれるんじゃないかなと思うのです。
そしてこの〈えほん遠野物語〉、挿絵でもって不安や恐怖を盛り上げてくれるんです。
北原明日香、近藤薫美子、中川学、町田尚子、中野真典、伊野孝行、軽部武宏、はたこうしろう、羽尻利門、樋口佳絵、阿部海太、飯野和好が挿絵をかいています。画風多彩で面白いです。
「ごんげさま」がわたしは好みです。遠野地方の家にはごんげさまを祀る家があり、獅子舞の頭(かしら)に似ているのですが、ちょっと違うのだそうです。神楽を舞うときに使われます。頭痛を抑えたり火事を消してくれたり、不思議な力を持つ神様です。このごんげさま、ほかのお家のごんげさまに会うと、ケンカが始まるのだそうです。負けたごんげさまは、耳をかじりとられるそうですよ。神様が縄張り争いをするなんて!興味深いです。なんだか身近に感じかわいらしい。うちとこのごんげさまが一番!ってそれぞれのおうちで言ってるんじゃないでしょうか。
遠野の人たちは怪異をただただ恐れるのではなく、日常のこととして受け入れている、そんな風に感じます。遠野というところはあちらとこちらの境界線が薄いのかもしれない・・・なんてことを信じたくなります。赤いカッパやごんげさまのバトルを見てみたいものです。きっと楽しいのじゃないでしょうか。