「どうぶつせんきょ」 ほるぷ出版 2021年6月発行 44ページ
アンドレ・ホドリゲス、ラリッサ・ヒベイロ、パウラ・デスグアウド、ペドロ・マルクン/作 木下眞穂/訳 林大介/監修・解説
原著「A Eleição dos Bichos」 Andre Rodrigues, Larissa Ribeiro, Paula Desguald, Pedro Markun 2018年
今回ご紹介したい絵本は「選挙」がテーマです。絵本でこのテーマ?だいじょうぶ?とおもっていたんですが、たいへんわかりやすく楽しい。
王様のライオンが、勝手に川をせきとめて、自分の巣穴の前にプールを作ったんです。川下には、水が流れてきません。ひどい勝手ですよね!これには我慢の限界、怒った動物たちは、デモ(みんなで道を行進し、伝えたいことを主張します)をしました。だけど、ライオンは何を言われてもへっちゃら。(話が全く通じない、こういう政治家のかたいますよね・・・・)
森のみんなは、ライオン以外の動物にリーダーになってもらいたい。そこで賢いフクロウが選挙を提案しました。
その土地のリーダーになりたいものは、立候補して、選挙運動をし自分の考えを伝える。
そして、みんな(有権者)は、立候補した人(候補者)に投票する。
たくさん投票をあつめたものが勝ち!みんなのリーダー(大統領)になります。
=選挙の規則=
1)選挙は、春におこなう
2)動物は、誰でも立候補できる
3)ひとり一票、投票できる
4)投票用紙は、誰にも見せない
5)票を一番多く集めたものが勝つ
6)候補者と有権者は、お互いに贈り物をあげたり、もらったりしない
7)対立する動物を食べてはいけない
サル、ナマケモノ、ヘビが大統領に立候補しました。ずうずうしくもライオンも参加します。誰にでも立候補する権利があるので、拒否できないのです。
選挙運動が始まりました。
テレビ番組にでたり、他の動物と一緒に自撮りしたり(自撮りって選挙活動なのね)、チラシを配ったり、意見を聞いたり、集会を開いて互いの悪口を言い合ったり(「それはいいことではありません」の注釈あり)、候補者同士で討論をする会も開きました。
立候補者もみんな頑張っています。有権者だってみんな真剣です。どの候補者が住んでいるこの森を良くしてくれるでしょうか?
この土地に住むどの動物にも望みがあります。
この絵本は、ブラジルで書かれました。4~11歳の子どもたちが実際に投票し、当選した動物がリーダーになっています。(当選した動物は秘密にしておきましょうね・・・)
民主主義ってなに?ということがよく理解できます。
巻末の解説に、「自分の想いや考えを大事にし、周りの人と話し合ってください。そして、自分とは異なる考えや願いと出会ったら、それを否定するのではなく、どうしてそのように考えるのかを丁寧に話し合い、違いを認め合い、おたがいの理解を深める努力をしてください。なぜなら、民主主義は、わたしたちひとりひひとりの意識によって支えられているのですから。」
たくさんの意見をまとめたり、”理解を深める努力をする”のは、なかなか難しいですが、ケンカしたり戦争するのよりはずっといいですもんね。人だから難しい、でも人だからこそできる、そう信じたいです。
カバーのうしろソデに作者の方たちの一言がのっています。「民主主義は、いままでの中で一番良い仕組みとおもう。でも今後もっとよい方法が発明されるだろう」とおっしゃっている方がいました。これが一番シみた気がします。