今回は、磯みゆきさんの物語を2点ご紹介いたします。
愛とは何かがテーマです。愛ってなに、とは使い古された言葉かもしれませんが、生きていくうちに必ずつきあたるカベ、といっても良いと思います。
「みてても、いい?(ポプラ ちいさなおはなし41)」 ポプラ社 2010年12月発行 79ページ
磯みゆき/作 はたこうしろう/絵
あひるさんが、動物のこどもたちに水泳を教えてくれています。上品に静かに泳がなくちゃいけないのですが、およぎが苦手なうさぎさん、みんなの前で泳げるかな・・と不安でもじもじ。そんなピンチの時に、きつねくんがいたずらをよそおって助けてくれました。きつねくんってかっこいい。うさぎさんはきつねくんがいつも何をしているか、見つめていたくなります。
きつねくん、いたずらする相手をちゃんと選んでいます。弱い者いじめはしません。欲張りなひと、悪口ばかりのひと、そんな人達にいたずらしています。うさぎさんでなくても、心惹かれますよ。
「みてても、いい?」と、きつねくんをおいかけるうさぎさん。ついてくるな!と拒否しつつも、ほんとのところ、まんざら悪い気はしていないきつねくん。
けれどあることがあって、うさぎさんはきつねくんに会いにこなくなって一週間。きつねくんは、うさぎさんのことを何も知らないことに気がつきます。
「いつものもりは、しんとしずかで、やけにひろくて、しらないもりみたいでした。きつねはふと、まいごになっているのは、じぶんのようなきがしました」孤独が鋭く胸に突き刺さります。
きつねくんはうさぎさんをさがしはじめます・・・
「もりでうまれたおんなのこ(えほんのおもちゃばこ25)」 ポプラ社 2007年4月発行 35ページ
磯みゆき/作 宇野亞喜良(うのあきら)/絵
良い子でいることを強制された少女の再生の物語です。
良い子でないと価値がない、と母に常に言われて育ったおんなのこ。良い子でいないと母は愛してくれません。愛だと思っていたものが愛ではないことに気づき窮屈な価値観に押しつぶされそうになったおんなのこは自らを壊して逃げ出します。
ある出会いがあります。森に住むくまさんです。彼は、ありのままにいていいんだよ、と教えてくれます。おんなのこの壊れた心の破片をひとつひとつ、彼女をほんとうに好きでいてくれる人とともに再発見していくのです。
「いいこかわるいこかなんてどうでもいい。ぼくはきみのことがだいすきで、ふたりでいっしょにいるだけでうれしいんだ。」
くまの瞳にうつるおんなのこは、おとなの女性になっています。その幻想的な恋愛表現(といっていいと思う!)にとてもどきどきしました!
くまさんみたいになりたいなあ・・・
作者の磯みゆきさんは、性別や年令を超えた幅広い愛を描いているようにおもいます。
「もりでうまれた~」のほうは、宇野亜喜良さんの挿絵がとっても官能的なのでそう感じやすいのかな、とはおもいますけれど。
愛ってなんなんでしょ?磯みゆきさんのかくほかの物語も追いかけたいとおもいます。