ちょっと大人むきなダールの昔ばなしのパロディ作品をご紹介いたします。ピリッと皮肉の効いたこのお話、いやだと感じるかたもいるかもしませんがどうぞご容赦ください。
「へそまがり昔ばなし (ロアルド・ダール コレクション12)」 評論社 2006年6月発行 85ページ
ロアルド・ダール/著者 クェンティン・ブレイク/画家 灰島かり/翻訳者
原著「ROALD DAHL’s REVOLTING RHYMES」 Roald Dahl Quentin Blake 1982年
「シンデレラ」「ジャックと豆の木」「白雪姫」「三びきのクマ」「赤ずきんちゃん」「三びきのコブタ」
この有名な6話の昔話を、ロアルド・ダールがキュっと皮肉を込めえがきなおしました。
若かりし頃にこれを読んで、驚きました。これは受け入れられない! とおもった記憶があります。
昔ばなしの主人公は、たいていは「いい子」と決まっています、と訳者の灰島氏がまえがきで書いています。「いい子」であることを、世の中は大人は、確かに求めています。子どもはいい子のほうが、大人にとって楽ですからね。(そして子どもだってそれに応えたいとおもうものですよね。)いい子であれと説く昔ばなしに抵抗したのが、この物語。
ダールのこの皮肉なユーモアは、すこぉし覚悟をして、童話とおもわず読まないほうが楽しめるのでしょう。ほかの人が幸せと感じることと、自分にとっての幸せは、ちょっと違うときもあります。迷子になったり道をはずれたほうが楽しい時もありますし。
ダメ王子を見きるシンデレラ、豆の木ジャックはお風呂に入って、義母の魔法の鏡を盗む白雪姫、三びきのクマの女の子は悪党だと断定するし、かなりの改変ですが、女性陣が強くて素敵です。特にわたしが好きなのは、オオカミをピストルでいきなり成敗する赤ずきん。「そこで赤ずきんは、パチリとウインク。ズロースのゴムにはさんだピストルをサッととりだして、ズドンと一発、おみまい。」するシーンにはにんまりしてしまいます。(だって、「ズロース」なんですよ!?!) オオカミの毛皮を手に入れるだけではなくプタのかばんまで手に入れる赤ずきんは、まあちょっとやりすぎ感もあるような気がしますが、一筋縄でいかないワルガールなのがわたしは好きです。
クェンティン・ブレイクの色気のある挿絵もダールのお話にぴたりとマッチしています。皮肉の効いたお話が読みたいかたに、おすすめいたします。
ロアルド・ダールは、第二次世界大戦で戦闘機パイロットとして従軍し、生死を彷徨う経験をもとにした小説や、ちょっと不思議な変わった味わいの短編をたくさん書いています。結婚してから児童小説もかきはじめました。たくさん書かれていますが有名どころは「キス・キス」「あなたに似た人」「飛行士たちの話」「おばけ桃の冒険」「チョコレート工場の秘密」映画にもなりましたね。
ついでながらわたしの好きなダールの児童書・・「オ・ヤサシ巨人BFG」「すばらしき父さん狐」「マチルダは小さな大天才」「魔女がいっぱい」