「怪物があらわれた夜 『フランケンシュタイン』が生まれるまで」 光村教育図書 2018年12月発行 39ページ
リン・フルトン/文 フェリシタ・サラ/絵 さくまゆみこ/訳

「フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス」という1818年に書かれた小説があります。世界で最初のサイエンス・フィクションといわれています。メアリー・シェリーという18才の女性が書きました。メアリーがその小説を書こう、と思ったときのことを描いた絵本、なのですが、ご存知ないかたのため、フランケンシュタインについて、ざっとの説明をば。

1.「フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス」の内容
ヴィクター・フランケンシュタインという青年が、死者の体をつなぎ合わせ、雷による通電で新たに人を作りだす・・というお話です。作りだされた人間は、見た目の怖さやその生まれた理由のため疎まれ「怪物」とよばれています。ですが、寂しさを感じる心や知性を持っていたのです。
怪物はとても孤独です。フランケンシュタイン青年に自分の伴侶となる女性の人造人間を作るようせまります。(ざっとあらすじ。)

2.メアリーの母、メアリー・ウルストンクラフトについて
メアリー・ウルストンクラフトは、男女の同権、誰もが教育を受ける権利がある、という思想を持ったひとでした。両親は結婚制度を否定していたため二人は入籍をしていなかったのですが、子供が生まれるにあたり入籍しました。子供が「私生児」として差別されることをおそれたからです。このことにより、同じ思想を持った多くの友人たちを失ったといわれています。そして娘のメアリーを生み、産褥熱(出産ののち高熱が続く。感染症の一種。)のため亡くなっています。

お母さんのお墓に刻まれたことばで、文字を覚えたというメアリー。
大きくなると、母の書いた本を読破したそうです。そうして作家になることを目指すようになったようです。

舞台は、イギリスの詩人バイロン卿の別荘。この別荘に滞在する、シェリー夫妻。ある夜、バイロン卿が、”ファンタスマゴリアナ”というフランスの怪奇譚を朗読します。そして、皆でひとつずつ、怪談を書こうじゃあないか、という提案をするのです。作家志望のメアリーも、もちろん参加しました。
滞在中、雨続きで外出がままならなかったため、屋敷で哲学談義をするバイロン卿の一行。死んだカエルに電気を通すと足が動く(ガルヴァーニ電気)、死者を蘇生することができる、といった科学的な話題だったそうです。
その哲学・科学談義を聞いていたメアリーは、その知識を、書き始めた物語にとりこみ、かの有名な登場人物を生み出します。「作り出された人間」を。

自分の生まれた経緯、メアリーが生まれることによって曲げてしまった両親の信条や思想・・そういったこともきっと作品に影響したでしょう。特におかあさんが自分が生まれることによって亡くなってしまったことは、大きな心の傷だったのではないでしょうか。
メアリーは「作り出された人間」に自分の境遇を重ね、想いをこめたのではないでしょうか。

フランケンシュタイン青年がつくりだした人間は、存在の理由、生きるための希望を欲して苦悩しています。「彼」は、経験の少なさゆえの性急すぎた行動をとってしまいました。そして生みの”親”たるフランケンシュタイン青年に憎まれ追われることになりました。

しかし彼は真に怪物だったでしょうか。「現代のプロメテウス」という副題がきいています。
SFを読むかたにおすすめしたい、メアリー・シェリーの物語でした。