「シカゴよりこわい町」 東京創元社 2001年2月発行 190ページ
リチャード・ペック/著者 齋藤倫子/訳者

1929〜1935年のアメリカが舞台です。1929年は、アメリカで大恐慌がはじまりました。世界中で経済が不安定になり、企業や銀行が倒産し、職や住む家を失う人がたくさんではじめる苦難の年でした。
9才のジョーイと7才のメアリ・アリスのダウデルきょうだいは、父方の祖母の住む小さな町で、夏の一週間を過ごすことになります。シカゴという大きな街に住む二人ですので田舎町は退屈・・とおもっていたら、とんでもない。7つの夏の一週間を、とても刺激的に過ごせるのでした。おばあちゃんは、大ぼらをふく、銃をぶっ放す、密漁する、ニセのコレクターものを作ってバザーで売る・・・などなどタフでしたたかな女性です。

ある夏では、家の前の郵便受けをチェリーボム(さくらんぼのようなかたちの爆竹)で爆破されました。金属でできている郵便受けが粉々になっているのでわりと威力ある爆竹のようですよね、なんて危ない!町の荒くれ者、カウギル兄弟のしわざです。彼らをこらしめる算段をするおばあちゃんがちょっと怖くも素敵。(ついでに隣人にもいたずらを仕掛けたようですが・・)
またある夏では、町を牛耳る見栄っ張りな銀行家の奥さんを、発展百周年記念のお祭りで、鼻をへし折ってやります。とことんまでやり抜くばあちゃんが素敵。ショーのダンスがロマンチックでとても好きです。(メアリ・アリスに言わせればちょっと違うようですが・・)

彼女のやり方は、かなり強引で乱暴ではあるけれど、その行動の本当の意味がわかると、ユーモアにあふれた正義感の強い人であるとわかります。無愛想だし子供をからかうのが好きだけれど、格好いいおばあちゃんとわたしも一緒に夏をすごしたいです。

そして料理がお上手。コーンシロップをたっぷりかけたパンケーキ、スパイス入りりんごジャム、ナマズとジャガイモのフライ、スグリのパイ、サワークリームレーズンパイそして自家製ビール! たまらなくおいしそうなお料理がたくさんでてきます。サワークリームレーズンパイ、おいしそうだなあ。

近所付き合いをしない、めったに本心をみせない、おばあちゃん。ハグなんか絶対にしないでしょうね。けれど最後の最後に深い愛情を見せ、物語をぐっと締めます。涙がこぼれます。
ダウデル夫人が人付き合いを避ける生き方をするのには、理由があったのでしょう。彼女の過去に何があったのか興味が湧きますが、ほとんど明らかにされません。それもまたよし。
おまけに、おばあちゃんのファーストネームも明らかになっていませんが、あまり謎におもわないのは、彼女の人となりがきちんと描かれているからだろうと思います。
さらにおまけに、気の弱いメアリ・アリスがおばあちゃんに影響され、強い女になっていくのが痛快。「なにもわかってないのね。男って、ちっとも女のことなんてわかってないんだから」という12才の少女のちょっとたどたどしいこのセリフが好き。
愛すべき最強のおばあちゃんといえば、この方をわたしは思い出します。大好きな物語です。興味引かれましたらどうぞ手にとってみてください。

「シカゴより好きな町」続編のこちらは、高校生のメアリ・アリスの視点で描かれた作品。理由あってばあちゃんの町で1年を過ごします。「シカゴよりとんでもない町」ばあちゃんのお隣りに引っ越してきた牧師一家の息子が語り手です。一家の家計は火の車で、教会は傷みがひどくて信徒が少ない、学校ではいじめがあったりとなかなか深刻です。巻ごとにお年を召していき、3巻ではばあちゃん90才を過ぎているようですが、むろんお元気!そして痛快!