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第21回 明日のまほうつかい

「明日のまほうつかい」 福武書店 1989年11月発行 132ページ
パトリシア・マクラクラン/作 金原瑞人/訳

気難しい明日(あした)のまほうつかいと、陽気なまほうつかい見習いの小さいマードック、そしてしゃべる賢い馬が、人々の願いに耳をすまし、かなえていくお話。内面を見て欲しい美女、意地悪ひねくれ夫婦の望むもの、わがまま娘の結婚相手を見つけたい両親・・望みを叶えるのはなかなか難しそうなものばかり。明日のまほうつかいとマードックはどう対処するんでしょうか。
なんといっても、マードックとしゃべる馬のおしゃべりの楽しいこと。気難しい明日のまほうつかいも微笑んでしまうんです。
さて、人々の願いを叶えるため耳をすませる魔法使いたちですが、これがちょっとひねりある解きほぐしかたをするんです。

ゲキレツ意地悪夫婦のところへ、ぞっとするほど正直で行儀よく優しく可愛い女の子プリムローズがやってきたので夫婦は意地悪やごまかしができなくなりました。それから・・の流れなどちょっと驚きますよ。

バイオリンつくりのブリスが完璧なバイオリンが出来なくて悩んでいます。その賢い妻が、完璧なバイオリンなんてあるわけないのに、と微笑みます。この妻と明日のまほうつかいとがなんだか訳ありな感じも、ブリスが完璧なバイオリンを作ることを諦める理由も、ちょっと児童文学らしくなくていいですね。年齢が大きいひとのほうがぐっとくるのではないでしょうか。
最後に、まほうつかい見習いのマードックの願いが叶います。その時の明日のまほうつかいとマードックの会話に、私は必ず泣いてしまいます。良い小説です。

作者のパトリシア・マクラクランは、家族のありようをテーマにした児童文学が多いとおもいます。
「のっぽのサラ」「やっとアーサーとよんでくれたね」「人生の最初の思い出(詩人が贈る絵本)」「犬のことばがきこえたら」  ほかにもたくさん作品あり。