今日の絵本は、ミロコマチコさんの作品をご紹介いたします。筆のあとがくっきり見える大胆な挿し絵。率直に申しまして「きれい」「かわいい」挿し絵ではないので好き嫌いがくっきりわかれそうです。ですが、このダイナミックな挿し絵はなんだかくせになります。
オオカミが飛ぶ?どういう意味だろう?とお思いの方はページを少しめくっていくと・・意味がわかりま~す。動物たちが大活躍なちょっと不思議な言い回し。
「オオカミがとぶひ」 イースト・プレス 2012年8月発行 34ページ
ミロコマチコ/著者
「きょうは かぜが つよい
びゅうびゅう びょうびょう ふきぬける」
「だって オオカミがかけまわっているから」
赤いベロがだらりととびでた鋭い目つきのオオカミの絵が見開き2ページに どーん! と表現されています。体よりしっぽのほうが大きい・・・ 不思議な絵です。前足を伸ばし、しっぽを力強くふりまわし風を切って駆けまわっています。
「とおくで カミナリが なっている
ゴロゴロ ドンドン なっている
ああ そうか
ゴリラがむねをたたいているんだ」
真っ黒いゴリラ、 どーん! 腕が太くて厚い胸板、大きく口を開け叫んでいます。カミナリの音をゴリラのドラミングに例えるのはオモシロイですねぇ。今後は、雷様がタイコたたいてる、でなく「ゴリラがドラミングしてる」という言い回しになるかもしれませぬ。
「かぜに ふかれて かみが さかだった
ツンツン トゲトゲ うえをむく
ああ ちがった
あたまに ハリネズミが のってたのか」
頭の上にハリネズミ、 どーん! 強い風に吹かれた髪の毛ってやっかい。手に負えません。髪の毛がハリネズミになるという表現、わかるようにおもいます。
そう、日常でおこること・感じることを動物たちで例えています。ミロコマチコさんの感覚が面白いですね。
時間がたつのが早く感じるのはリスが時計を早めたから、時間をゆったりに戻してくれるのはカメ(エンデの「モモ」ちょっと思い起こします)、部屋の中のものがなくなるのは、コウモリのしわざ、なのだそうです、彼らのせいだったのだ、テレビのリモコンがなくなるのは!
ちょっと不思議なのは「眠れないのはばっちりトナカイがみているから」
なんでトナカイなんだろう?残念ながらこれには想像がふくらみませんでした。日本にいないからかしら・・
うなずけるのも、う~ん?とおもうのもありますが、作者の不思議な感性がとっても楽しいですよ。ラストの文章「雨がやんでもうかみなりはならないのは、ぼくがねむったから」が面白い。ちょっと哲学なかおりがする(?)。よろしければお手にとってみてください。
ミロコマチコさんの他の絵本
「ぼくのふとんはうみでできている」「オレときいろ」「つちたち」「けもののにおいがしてきたぞ」「まっくらやみのまっくろ」「ドクルジン」巨大な創造主のおはなし。「てつぞうはね」暴れん坊の猫(8kg)てつぞうのお話。読む度泣いてしまう。
エッセイ・画集
「ホロホロチョウのよる」「けだらけ・ミロコマチコ画集」