「森のおひめさま」 平凡社 2003年2月発行 22ページ
ジビュレ・フォン・オルファース(ジビレ・フォン・オルファースとも)/作 秦理絵子/訳
原著「Prinzesschen im Walde」 Sibyle von Olfers 1909年
森に住む小さなお姫さまのいちにちです。
風、朝露、苔、きのこ、星が擬人化され、子供の姿で描かれています。彼らがお姫さまのお世話をします。つゆのこたちが、髪をとかし着替えをし朝のみじたくをお手伝い。それがすんだらおいしい朝ごはんですよ。こけのぼうやたちがお茶やはちみつを用意。まんなかの子がお皿にのせているパンのようなデザートのような茶色ものはなんでしょう?パンを失敬しようとするリスを指差すこけの子どもが面白い。
からす先生と勉強を少し。真面目そうな表情のお姫さま「はやくおわんないかなー」なんて思っていそう。かしこくりこうにならなくちゃいけませんから、少しがんばりましょう。
さあ、勉強はおしまいにして、森のはずれまでこじか、うさぎ、りすなど動物たちとおでかけする遊び時間です。きのこぼっこたちがむかしのおはなしを聞かせてくれます。まあるいフォルムの赤いカサのきのこのぼうやたちのかわいいこと。
闇がせまりお家へ帰ります。星のこどもたちが星明かりをかかげ、お城へ向けて行進です。
「きょうも たくさん わらって あそんだ」そんな楽しい一日を終えて眠りにつきます。
夜には星のこどもがひとり見張りにたってくれる、というのが素敵。見守ってくれている安心感で気持ちが安らぎます。素敵な終わり方ですねえ。
挿絵のまわりを植物が縁どるように描きこまれていてとても美しいです。実や花がついた木々がなんともきれい。作者のオルファースさんが自然を観察し愛したのがよくわかります。子どもたちの絵も繊細で表情がかわいい。
作者のジビュレ・フォン・オルファースは、1881年プロイセン王国(昔のドイツ)で生まれました。子供の頃はおてんばだったのだそうです。草花、虫、星や風など自然を登場人物にするほどですから、外で元気に遊んだ子どもだったのでしょう。自然を愛する気持ちが伝わってきます。擬人化された自然のものたちの愛らしさにぜひ触れてみてください。
他の作品に、
「風さん」「ねっこぼっこ」「ちょうちょのくに」「ゆきのおしろへ」「うさぎのくにへ」が邦訳されています。