に投稿

第62回 八方にらむ迫力ある猫

今日は、猫絵本をご紹介。
カイコガという虫は、幼虫から成虫になるため、サナギになりますが、その時、マユ玉を作ります。細い糸を口から吐き出し、丸長のかたちのマユを作りますが、これが美しい絹の生地のもとなのです。おかいこさまとよばれ、昔から大事に育てられてきました。5000年の歴史があるのだそうです。
おかいこさまを食い荒らすネズミがたくさんいました。それを猫が退治するお話です。表紙の三毛猫の「みけ」が主人公です。
ちなみに、八方は「東・西・南・北・北東・南東・北西・南西」のことで、あらゆる方向と言う意味だそうです。

「八方にらみねこ」 講談社 1981年2月発行 31ページ
武田英子/文 清水耕造/絵

捨てられた子猫のみけが雪の積もる道をとぼとぼと歩いています。
おかいこさまを育てているおじいさんとおばあさんが、捨て猫だった三毛の子猫のみけをおうちにいれてくれます。今日は、小正月。神さまにごちそうやお花を供えてお祭りする日、きっと神さまのおひきあわせだろう、とおばあさんが優しく迎え入れてくれます。いろりばたにいたおじいさんも、みけにおいでおいでと手招きしてくれるのです。優しさにほっとしますね。胸にほんわり火が灯るような心持ちがします。
ネズミたちから、おかいこを守ろうと、じいさまばあさまの優しい気持ちに報いようと、みけは頑張りますが、まだまだ子猫、破れてしまいます。
おれたちネズミが怖いのは、「やまねこ様」である。やまねこの八方にらみの術こそ怖いのであって、子猫なんか怖くないのである(意訳しております)。そんな歌をうたってみけをバカにします。けっとばされシッポやヒゲをかじられて気が遠くなってしまったみけ。かいこを好き放題に食い荒らされてしまい、惨敗です。

猫なのに、情けないと落ち込むみけ。優しいおじいさんとおばあさんに恩返ししたいのです。決心したみけは山へと向かいます。やまねこに会い、八方にらみの術を教えてもらおうと、真っ暗でおそろしい山をずいずいと登っていくのです。
にらみで火を消す術の修行は厳しいものでした。燃えあがる枯れ木をにらみます。ヒゲが焦げても「うむ。」とにらみます。両足を踏みしめ地面をツメでひっつかみ、こらえにこらえ、毎日・毎晩、睨みます。熱さで目から涙がにじみ、その涙が熱で蒸発しても、睨み続けます。みけがだんだん、迫力ある顔つき・体つきになり、まあるい子猫の体型からシェイプアップされた大人の猫の体になっていくのが挿絵でわかります。目に力がこもり、らんらんとした大目玉になっていくみけ。

修行がはじまって一年過ぎ、おかいこ様を育てる春が近づいています。とうとう、にらみで火を消すことができるようになります。八方睨みの術を会得したのでした。
山をおり、じいさまばあさまの待つ家に戻りました。みけがにらめば、ネズミは体がすくんで逃げられません。おかいこに害なすネズミたちをにらみころし一網打尽。「にらみころす」という文章がちょっとこわいくらいですが、ねずみを睨むイラストのみけは、なんだかおかしみがあります。なんでしょうね・・何かに似てると思って考えてたのですが ・・・パグだ!
にらみのみけのうわさが広まると、村の人たちがみけを貸して下さい、と頼みに来たそうです。大忙しのみけ、一匹では足りない。そこでじいさまは、みけを絵に描いて配ったんだって。みけの絵が描かれただけの御札でも、ネズミ退治効果があったそう。
最後のページの猫札が、迫力ありつつとてもかわいいです。わたし養蚕はしてないですが、猫札、欲しいなあ。
・・ちなみに、三毛猫のオスはなかなか生まれないのでたいへん珍しいんだそうですから、このみけさんは、女の子なのでしょうか。表紙を見ると、腕や胸の筋肉がかなりついてる感じのむきむきボディです。・・頼もしいですね!