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第61回 夜にみまわるこびと

「みまわりこびと」 講談社 2014年10月27発行(原著は1960年) 25ページ
アストリッド・リンドグレーン/文 キティ・クローザー/絵 ふしみみさを/訳

大事にすると、農場をまもってくれる小人のおはなしです。スウェーデンではトムテ、ノルウェー・デンマークではニッセ、とよばれています。敬意を払って接しないと農場を出ていってしまうんだそうです。日本の妖怪のざしきわらしに似ているようですね。

冬の真夜中、森の農場では、人も動物もぐっすり眠っています。雪は深く積り白く輝いています。肌を刺すような寒さなので、夜も暖炉で火を燃やし家の中を暖めます。
真夜中、一人起きているのは・・・こびとです。いつからいるのか誰も知らないほど、昔からこの農場にいるのです。その年とったこびとは納屋に住んでいます。夜にこびとは、農場をみまわり、牛・馬・鶏や羊たちに声をかけます。耳には聞こえないその小さな言葉が動物たちにはわかります。冬はきて、また去っていくもの。夏はきて、また去っていくもの。時は巡って、温かで緑多く楽しい季節がまたやってくると、動物たちを励ましています。
そして犬のカーロの鼻に優しくふれてご挨拶(表紙をごらんください)。カーロへの挨拶が特になんだかぐっときます。カーロも毎晩、友達のこびとがくるのが楽しみなのです。犬のみ名前が明かされてますので身近に感じるのでしょうか。

夜に見回って農場を気にかけてくれるけれど、人間には、こびとの姿が見えないし声も届きません。それでもみんな、こびとがいるのを知っているのは、朝になると、雪の上にてんてんと、小さな足跡が残っているからなのです。こびとは寂しくおもっています。そうして、納屋に戻ります。納屋で待っていた猫にミルクをあげ、本を読み、夏を夢見てベッドで眠るのです。
こびとの声をきくことができないというのはかなり寂しいですね。人間は取り残されているという感じがちょっとしますが、寂しくもあっためてくれる絵本です。ぜひ小人に会ってみたいですね。